松葉ガニの歴史
今ではすっかり「冬の味覚の王者」として知られている松葉ガニ。
では、この松葉ガニは一体いつ頃から食べられているのでしょうか。
松葉ガニの歴史について覗いてみましょう。
松葉ガニの名が登場する最古の文献
松葉ガニの名称が登場する最も古い文献は、近年になって見つかった1782年(天明2年)頃に鳥取藩の筆記係 山田佐平太が記した記録です。
これには鳥取藩主 池田治道が津山藩主 松平越後守に松葉蟹を送った記録が記されており、当時より大切な方への贈答品として松葉ガニが選ばれていたことが分かります。
この文献が見つかる以前は、1845年(弘化2年)に書かれた鳥取藩の『町目付日記』が最も古い文献だとされていました。それによると11月13日、御用座敷建て替えの棟上げの祝宴が用意された献立に、松葉ガニの名が記されています。それにちなんで、鳥取県では11月の第4土曜日を「松葉ガニの日」としています。また、1858年(安政5年)に書かれた『町年寄御用日記』の、11月30日(晦日)の頃に町役人の昼食としても登場しています。
鳥取藩主が贈答品にも使った
前述の記録以外にも、鳥取藩12代藩主 池田慶徳は、弟の岡山藩主 池田茂政に、松葉ガニを贈っているという事から、由緒正しい鳥取県の冬の贈答品ともいえ、『池田慶徳公御伝記』にもその様子が書かれています。
江戸時代の松葉ガニ漁とは
江戸時代の藩主や町役人は松葉ガニをすでに食していようです。
当時の松葉ガニ漁は一本の縄に、釣り針を付けた縄をたくさん付けた延縄で”釣る”延縄漁でした。延縄漁とは本来、ヒラメ、マダイ、アカガレイ、タラなどの魚を獲るための漁法です。松葉ガニは、その副産物として揚がったものであり、水揚げ量は極めて少なく、珍重されていたのではないでしょうか?